【企業戦略】~#7 コスト・リーダーシップ戦略とは~

 

どうもいけちゃんです。

 

前回の垂直統合戦略に引き続き、事業戦略編の第2弾はコスト・リーダーシップ戦略についてです。

 

「コスト・リーダーシップ」と言うと、よくいかに低価格で製品を販売するかという戦略だと思われがちですが、そうではなく同様の製品を他社よりもいかに低コストで生産出来るかがコスト・リーダーシップ戦略の趣旨です。

 

価格が一定で、限界まで生産コストの削減に成功すれば、企業の利益は最大化されるためコスト・リーダーシップ戦略は企業にとって極めて重要な戦略だと言えます。

 

今回のポイント

・コスト・リーダーシップを生み出す要因を抑える

・コスト・リーダーシップ戦略の経済的価値を把握する

 

コスト・リーダーシップの源泉

 

コスト・リーダーシップ戦略の定義は上記で述べたように、

事業活動のコストを競合他社を下回る水準にまで低下させることで競争優位を獲得する戦略です。

 

こうした戦略を可能にする要因として以下の3点を挙げることが出来ます。

  • 規模の経済
  • 経験の差による学習効果
  • 規模に無関係なコスト優位性

 

規模の経済

 

「規模の経済」は読者の皆さんもおそらく耳にしたことがあるワードであり、企業のコスト優位の要因として最もよく指摘される要素です。

 

規模の経済とは、

生産の規模が増大するにつれて製品1単位当たりの平均コストが減少する

ことを言います。

 

 

図のように最適な生産量(X)までは生産量が増えるほど平均コストが低下していきます。

逆にある一点を超えて生産量を増加させ続けると逆にコストが上昇し、規模の不経済を被ることになります。

 

では、なぜ生産量が増えると製品1単位当たりのコストが低下するのでしょうか?

 

生産規模と生産設備

 

一般的に大規模生産を行う企業は、そうでない小規模生産を行う企業では使いこなせない専用の製造設備を持つことが出来、且つそれをフル活用することが可能になります。

 

皆さんもテレビや学校の社会科見学などで工場の大量生産の現場を見たことがあると思います。

 

生産規模が大きい場合、製造の自動化によって1製品あたり1円でも、1銭でもコストカット出来れば全体で見た時の影響は非常に大きくなります。

 

また、大量生産可能な最新鋭の設備を導入し、それを短期間で償却出来ればそれだけでも十分なコスト優位になり得ます。

 

生産規模と従業員の分業化

 

大量生産を行う企業の従業員の業務は細かく分業化され、専門性が非常に高くなる傾向にあります。

 

例えば自動車工場で、塗装を行う人、シートを取り付ける人、エンジンを取り付ける人…などがいるように特定の業務に特化することで、作業効率が高くなり、延いては企業のコスト低下に繋がります。

 

一方で、生産規模が小さいと生産設備と同様に専門性の高い従業員をフル活用することが難しく、往々にして1人の従業員が複数の業務を掛け持つことになります。

 

そうなると効率性は高くなりにくく、結果コスト削減に結びつかなくなります。

 

経験の差による学習効果

 

企業のコスト優位の第2の源泉は、学習効果によるものです。

 

上記の分業化と近い概念になりますが、長年繰り返し同様の事業活動を行うことで、経験やノウハウが蓄積され、徐々に事業のプロセスが改善されることで無駄なコストが削減されていきます。

 

 

図のように、生産量や経験が蓄積されるごとに単位当たりのコストは低下していきます。

当然、徐々に改善の余地が少なくなることから、コストの低下率は鈍化していきますが、規模の経済のようにコストが逆に上昇する局面は存在しません。

 

もちろん、学習効果によるコストの低下はなにも製造業だけではなくサービス業などあらゆる業界に存在しています。

 

学習効果と競争優位

 

学習効果が企業のコスト低下に繋がる点については、多くの方が納得されると思います。

 

学習効果が最も効果を発揮するのは、新興業界における先行者企業においてであると言えます。

 

特定の業界にいち早く参入した企業は、図の学習曲線を先行して駆け降りることが可能であり、後発者よりも明らかにコスト優位を確立することが出来ます。

 

規模に無関係なコスト優位性

 

さて、企業のコスト優位第3の源泉は規模に無関係な優位性です。

 

この議論は、以前の5つの競争要因の中の新規参入の脅威や、「見えざる資産」の部分で繰り返し述べてきた内容になります。

 

つまり、原材料へのアクセス、輸送経路、企業の立地条件、企業文化、経営陣の能力…等々。

こうした規模に関係なく企業が持ち得る要素もまた、コスト優位の要因になり得ます。

 

コスト・リーダーシップ戦略と持続的競争優位

 

これまでコスト・リーダーシップ戦略の概要について解説してきました。

 

繰り返しになりますが、いかなる戦略も稀少性が低く模倣(直接的or代替的)が容易であれば、企業の持続的競争優位には働きません。

 

では、稀少性が高く模倣困難なコスト優位の要因とは何なのでしょうか。

 

これまで解説してきたコスト優位性の要因と、それらの稀少性や模倣困難性を高める要因をまとめた表になります。

 

結論、累積生産量の差が影響する学習効果や、企業の歴史や社会的な複雑性を孕んだ規模に無関係なコスト優位性や、人材や企業文化などの「見えざる資産」稀少性・模倣困難性共が共に高いと考えられます。

 

一方で、コスト・リーダーシップ戦略で最もポピュラーなコスト優位性である規模の経済は比較的模倣されやすい要因なのです。

 

なぜなら、生産規模の修正は既存の生産ラインの見直しや統合、或いは更なる投資によって比較的容易に達成出来てしまうからです。

 

規模の経済が持続的競争優位の要因となりうるのは、自社の特定の製品が業界内で非常に高い割合を占める場合に限られます。

(例:ペン市場における使い捨てボールペン)

 

コスト・リーダーシップ戦略の価値と留意点

 

コスト・リーダーシップ戦略はいかに低コストで製品を製造し、利益を最大化するかという点に重きが置かれていますが、企業にとってコスト削減は他にも様々な経済的価値をもたらします。

 

しかしながら、一方でコスト削減は常にある重要なリスクを伴っていることも忘れてはなりません。

 

コスト・リーダーシップ戦略の経済的価値

 

持続的なコスト優位性を確立することは、以前解説した業界を取り巻く脅威である5つの競争要因の圧力を緩和させることが出来ます。

 

業界内の他の競合他社に対して優位に働くことはもちろんのこと、稀少性が高く模倣困難なコスト優位を持っていれば、新規参入者を阻むことも出来ます。

 

また、コスト上昇要因となる売り手(サプライヤー)の脅威に対しては、高コスト企業と比べて高い取引値段に応じる柔軟性を持つことになりますし、買い手(バイヤー)が利益を押し下げようとしても、コストが低い分ある程度の利益は確保できると考えられます。

 

最後に、仮に魅力的な代替品が誕生したとしても、低コスト故に価格面で代替品に対抗することが可能になります。

 

以上の様にコスト優位性の確立は業界を脅かすあらゆる脅威に対する対抗策になり得ます。

 

コスト・リーダーシップ戦略の留意点:ターゲット設計システム

 

あらゆる脅威を緩和するコスト・リーダーシップ戦略ですが、同戦略を採用する上で、企業が最も気を付けなければならない点があります。

 

それは、コストと品質のバランスです。

 

当たり前ですが、いくらコストを削減してもそれによって品質やサービスが他社よりも劣ってしまえば、何の競争優位性にもなりません。

 

トレードオフの関係にあるコスト削減と顧客ニーズとの兼ね合いを解決するのが、ターゲットコスト設計システムです。

 

この長ったらしい名前の政策は、トヨタやソニーなどあらゆる大手メーカーが採用している政策なのです。

✓ターゲットコスト設計システム

→商品企画の段階で、市場調査を基にしたニーズや競合他社の価格から、まず販売価格を設定する。そこから、目標とする利益を差し引いた価格を原価とすること。

 

つまり、通常は生産コストに目標利益を上乗せして販売価格を設定しますが、その逆を行っているということです。

 

この政策によって品質やサービスのレベルを維持しつつコストと利益を調整することが出来ます。

通常のプロセスと比べれば確かに融通は効きにくくなりますが、そもそも顧客ニーズを満たせない企業は持続的な競争優位など確立できるはずがありません。

 

企業戦略について学びたい方へ

 

本記事を執筆する上で参考にしている書籍を紹介させて頂きます。

本書では、記事に書ききれなかった多数の事例や、各フレームワークの更なる詳細を読み解くことが出来るため、戦略論に関心がある方は是非とも手に取って頂きたい書籍になっています。

 

 

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最後に

 

では、ここまでお話ししてきた内容をまとめておきます。

 

・コスト・リーダーシップは低価格での販売ではなく、最大限コストを削減し、いかにコスト優位性を獲得するかという戦略である。

・コスト優位性は、業界に対するあらゆる脅威に対する対抗策となり得る

・コストを最大限削減しつつも、顧客ニーズを満たすことが真の持続的競争優位をもたらす

 

 

今回も最後までご覧いただきありがとうございます。

ではまた。

 

 

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