どうもいけちゃんです。
事業戦略編第3弾は、製品差別化戦略です。
同戦略は事業戦略の中でも最もポピュラーで、イメージしやすいため、一々説明されるまでもないと思われがちですが…
実は差別化戦略はこれまでの垂直統合やコストリーダーシップよりも企業にとって難易度の高い戦略なのです。
なぜなら、その企業の製品やサービスが他社と差別化されているかを決めるのは企業ではなく、顧客だからです!
今回のポイント ・製品差別化を生み出す要因を抑える ・製品差別化戦略の経済的価値を把握する |
製品差別化の要因
上記で述べたように、いくら企業が資金を投じて製品やサービスの差別化を図ったとしても、それが顧客に認識されなければ、それは差別化と呼ぶことは出来ません。
では、一体製品差別化はどういった要因によって起こり得るのでしょうか?
主要な要素として以下の6つを挙げることが出来ます。
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製品の特徴
製品差別化と聞いて一番最初に浮かぶのが製品の仕様や性能の変更でしょう。
例えば自動車業界で言えば、ドイツのメルセデスベンツは高級感と加速性能を、トヨタは品質の高さと信頼性を、そして韓国のヒュンダイは外観と価格をそれぞれ特徴として売り出しており、他社との差別化を図っています。
この製品の特徴は正に顧客の認知が重要になってきます。
どんなに企業が努力しても、機能面であまりにも高度過ぎてその変化に顧客が気付かず、何の便益も生み出さなければ意味を成しません。
製品の特徴で差をつけるためには、顧客にとって分かりやすく、且つ便益をもたらすものでなければなりません。
機能間の関連性
製品の機能などはそれほど差別化は図られていないものの、企業内の複数の機能間の連携が差別化を生み出すこともあります。
アップル製品はその典型でしょう。
OSの違いはあれど、iPhoneもサムスンなど他のスマホ製品と比べて性能面で抜きん出た性能を誇っているわけではありません。
しかしながら、Macbookやアップルウォッチ、iPadなど他のアップル製品、更には同社の技術的サポートや様々なサービスとの関連性が極めて強くなっています。
顧客がアップル製品を買う時、それは単に電化製品を買っただけでなく、アップル社との「関係」を買ったと考えることが出来ます。
こうした機能間の関連性は、明らかに顧客に便益をもたらし差別化の要因になるでしょう。
タイミング
製品を市場に導入するタイミングも差別化の要因になる場合があります。
タイミングが差別化の要因になり得るのは、これまでも何度か登場した「先行者」であるケースです。
特に新興業界において先行者となることで、他社に先駆けて重要な経営資源を確保することや、自社の製品を業界の標準にすること(デファクトスタンダード)が可能になります。
それによって、顧客の認知を高めることが出来、延いては後発者の製品に対する顧客のスイッチングコストを高めることにも繋がります。
例え、後発者企業の製品やサービスが先行者のそれと大きな差がなかったとしても、高い顧客認知度や、自社製品の標準化は十分な差別化要因になり得ます。
製品ラインナップ
一企業によって提供される製品やサービスのラインナップもまた差別化に働くことがあります。
機能間の関連性に近い考え方ですが、製品やサービスが技術的に関連していたり、複数の製品をまとめ買いする傾向にある場合は品揃えが重要になってきます。
まとめ買いの事例としては、家電量販店やショッピングモールが考えられます。
多くの買い物客は、違う店舗や違う階を行き来するよりも、なるべく一か所で複数の店舗や製品を見れる方を好むものです。
こうした「ワンストップ・ショッピング」によって顧客の移動コストを削減するには、製品や店舗の配置やラインナップが重要であり、延いてはそれが他社との差別化に繋がる可能性があります。
地理的要因
店舗や企業の立地といった地理的要因は、これまで規模に無関係な優位性として参入障壁やコストリーダーシップの面で何度も登場してきました。
歴史的要因や社会的複雑性故に成立する地理的要因は、当然それだけでも他社との差別化の源泉になり得ます。
地理的要因を最大限活かしている事例として、フロリダ州のディズニーリゾートが挙げられます。
ディズニーはエンターテインメント施設やホテル、レース場など様々な設備の集中立地によって莫大な数の観光客と雇用を生み出しているのです。
こうした地理的な要因は他社が容易に模倣することや代替策を講じることが困難であるため差別化の要因になります。
評判
最後の6つ目の要因は、企業の評判です。
評判はイメージと置き換えてもいいかも知れません。
実は、この評判こそが最も有力な差別化の要因であるとされています。
評判と言うのは、得てして実際の根拠がなくても成立するものであり、且つ一度根付いてしまえば長期間持続するものです。
しかしながら、当然「良い」評判というのは確立させるのが極めて困難です。
例えば、高級時計のロレックスですが、おそらく皆さんはロレックスに対して技術や品質が高いというイメージを持っているはずです。
ところが、実はロレックスの時計に用いられている技術は旧式の物で、機能面で言えばその辺の電波腕時計の方がよっぽど優れているのです。
それでも、ロレックスに対する評判(或いはイメージ)によって、上記の事実は無に等しくなっています。
ただ、評判やイメージにはもちろん悪いものもあります。
悪い評判やイメージもまた根拠なく持続するものであるため注意が必要です。
製品差別化と持続的競争優位
製品差別化の源泉となる6つの要因に関して解説してきましたが、重要なのはそれらが企業の持続的な競争優位をもたらすか否かです。
実は、製品差別化と言われてよくイメージされる、製品の機能や特徴などは模倣されやすい要因なのです。
特にメーカー企業であれば、競合他社の製品を買ってきて分析することで、差別化の源泉となっている機能や特徴を分析し、自社製品に取り込むことが可能だからです。
これをリバース・エンジニアリングと言います。
一方で、歴史的要因や、社会的複雑性が絡んでいたり、更には何が差別化を生み出しているのか因果関係が不明であるほど模倣コストは高くなります。
最も、模倣困難性が高いのはやはり評判です。
良い評判は企業が意図して構築するには限界がありますし、構築するにも多大な時間を要するため、模倣コストが高い差別化要因と言えます。
製品差別化とコスト・リーダーシップの両立
ここまで製品差別化に関して解説してきましたが、評判や地理的ロケーションなどは特殊な差別化要因であり、おそらく大多数の企業が製品やサービスの見直しによって差別化を図ろうとしているはずです。
そうなると、当然人件費や研究開発費など多くのコストが掛かることになります。
ここで、一つの疑問が浮かびます。
製品差別化戦略とコスト・リーダーシップ戦略は両立できるのか?
ということです。
一見トレードオフの関係にある両社ですが、結論両立可能であると考えられています。
その主な理由は製品差別化による販売量の増加にあります。
製品差別化が顧客に認知される→需要が高まる→販売量が増加する
このように生産量・販売量が増加するとこで規模の経済や、学習効果などコスト削減要因へとつながると考えられます。
つまり、製品差別化を成功させることは、後々コスト・リーダーの地位を確立することを可能にするということです。
企業戦略について学びたい方へ
本記事を執筆する上で参考にしている書籍を紹介させて頂きます。
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企業戦略論(中(事業戦略編)) 競争優位の構築と持続 [ ジェイ・B.バーニー ]
最後に
では、ここまでお話ししてきた内容をまとめておきます。

・製品差別化を生み出す要因は、製品面だけでなく地理的要因や評判といった要因も大きな影響力を持つ
・製品の機能や特徴、ラインナップなどはリバース・エンジニアリングによって模倣される可能性が高い
・製品差別化戦略と、コスト・リーダーシップ戦略は両立可能である。
今回も最後までご覧いただきありがとうございます。
ではまた。